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MAの導入や運用で難しい点と成功のポイントとは?【ネクストライク182号】

国策として施行された働き方改革が掛け声だけでなかなか企業内で浸透しなかったテレワークや労働生産性、ジョブ型雇用への移行などが、今年春のコロナ禍から一気に加速されました。今、非接触型営業への注目が集まっています。お客さまと接触しないで行われるMA、顧客育成の仕組みの中で、これからは、必須になります。しかしその成果を得ることは決して簡単ではありません。現在のオフラインとオフラインでのマーケティング施策力そのものの実力、メルマガなどの経験則、デジタル施策の熱い社内トップの支援姿勢、MAの運用部門と営業部門などの部門間の風通しのよさと組織力などなど、いくつかの解決すべき課題があります。
日本でMAが導入されたのは2014年頃。今まで、ノウハウや導入事例などがあまり公開されていなく、ベンダーにしても、実際の運用は企業内のノウハウだけにオープンにできない事情もあるようです。そこには、MAで成功するためには導入や運用上の難しい点が横たわっているように思います。

1.MAの導入や運用で難しい、3つの点とは?

1)MA導入活用がマーケティング施策活動の中で考えられていない
MAは、ネット活用の中でも会社の強みや弱みを把握し、その対策を考え実行する、かなり成熟された企業様の施策と言え、今までの業務と並行して導入と運用を行うため、社内スタッフのノウハウ習得と日頃の業務に負担がかかります。また、MAは単なる管理システムであって、マーケティングコンテンツを作るのも、それをメルマガなどで配信し、履歴分析などにより高スコア客を見込み客として営業に引き渡す、この一連の作業を行うのはすべて、関係するスタッフの人間力にかかっています。マーケティング戦略の、市場や競合、流通、顧客(消費者)、広告SP戦略の知見をベースの上に、最新のテクノロジーであるMAを活用すること、この考え方の順番を押さえることが、絶対必要です。例えば、MAでさかんに駆使されるメルマガ手法・対策やコンテンツの充実、Web構築などがあらかじめ充分用意されていなければ成り立ちません。そういった条件を備えていない企業さまは、条件を整えるのと並行して検討するか、もしくは、MA導入は早計と考えます。これが必須の考え方で、逆に言えば、このことに関心なくはじめられた場合は、間違いなく失敗するかと思います。

2)そもそも、コンテンツの社内リソースが足りない
そもそも、非接触で積極的に顧客のアプローチ特徴のあるMA、そこで活用するコンテンツの準備は必須になります。いわゆる、アプローチからクロージングまでの営業ステップごとのマーケティングコンテンツが不足しているため、顧客を、ある基準の見込み客に顧まで高め、営業マンに引き継ぐまでに至らないケースが多く見受けられます。営業プロセス別、ターゲット別、シナリオ別のコンテンツ不足は致命的です。会社HP以外に顕在客を主とする向けの商品サイトは充実していますか?潜在客を主とするWebサイト(ブログ形式のオウンドメディア)は充実していますか?展示会やセミナー、キャンペーンなどのSP施策は充実していますか?。。。こういったことができていない、社内リソースが足りなければ、MAの成果は難しかったり、限定的と考えます。また、企業のもつ市場性や商品力(他社差別性)も大きな要因、このパワーが強ければ、ひとつひとつのコンテンツの魅力が強く豊富になるはずです。自社の強みを日頃からいかにコンテンツとして訴求しているかが、MA導入によって見える化できるようになります。

3)MAの運用を出来ずして成果が上がらない
MAの導入後に多く聞かれる悩みとして、企画設計上の問題点「スコアリングの設定が難しい」、コンテンツ上の問題点「スコアが増えない」、営業と関係しての運用上の問題点「高いスコアを営業に引き渡したが成約が悪い」などの基本的な問題点があるようです。効率と生産性のある営業体制づくることにMAの目的はあり、MAの導入を機会として、例えば、リードを獲得する施策中心のマーケティング部門とその後のフォロークロージング・成約活動を行う営業部門、大きく2つのマーケティング活動を仕組み化・連動を図る必要があります。この組織力、部門長や責任者の協力がなければ、MAを運用するうえでの問題点を解決することはできません。

2.MAでうまくいく、5つの成功のポイント

MAをうまく成功させるポイントを5つにまとめてみました。

1)MAに対する社内の理解を得る
単に、MA単独ではなく、適切なマーケティング施策があり、その施策全体の中で機能し成果を出します。MAそのもので成果が出せるものではないため、効果測定は難しいと言えます。事前に、どういった体制で、どういった運用体系で、どのくらいの成果を期待するか、導入時の目的や運用しかた、中長期的な計画の中で社内理解を深め、PDC運用することが重要です。

2)まず、MAで活用するコンテンツを充実する
そもそも、コンテンツが不足して、MAは成り立ちません。
ほぼすべての企業さまは、会社HPはしっかり更新されているかと思いますが、特にMAを導入するとなると、やはりコンテンツ不足と思われます。オンライン上の、商品やいくつかのWebサイトのほか、展示会やセミナー、キャンペーンなどの実施のほか、メルマガ会員に登録してもらうための魅力的な商品や販促施策やツール、顧客情報を得るためのダウンロード資料、詳しい商品情報である商品・販売マニュアル、直接的な購入のきかっけとなる納入事例・お客さまの声などオフラインコンテンツが不足しているケースが数多く見受けられます。顧客の属性や興味関心~理解~比較~購入までの検討度に応じ、”それは自分が求めていたことだ”と自分化できるまで細分化したコンテンツが用意され訴求できなければ、MAで成果が出るはずがありません。継続的なコンテンツの追加や更新も大事です。いくら優れたMAシステムであっても、いくら優れた社内外のスタッフであっても、そもそも、これを軽視していて、失敗しているようです。もし、これが不十分なままMAを運営していたら、それは予算の無駄遣いといえるのではないでしょうか?いまから、コンテンツ作成に力を入れるべきです。どんなコンテンツがいいのかを考えれてない、用意されていないなら、MA導入は早計と言えます。

3)アプローチシナリオとスコアリング設計を行う
顧客ごとの購買心理や行動、それに対するコンテンツや施策の提供や顧客育成計画を通じて潜在客を見込み客に育成することがMAです。そのためには、顧客の属性や行動履歴のグループにごとに、興味関心~購入までの購入プロセスにおけるコンテンツ及び施策計画を描いたカスタマージャーニーマップとどういった攻略を想定するのかのシナリオ仮説を描き、スコアリング設計を行うことが重要です。具体的は、メルマガを通じコンテンツを配信、メールの開封やコンテンツのクリック、Webサイトの閲覧、資料のダウンロード、セミナー・キャンペーンの申し込み、お問い合わせなどの履歴を評価・スコア化、ある基準以上の顧客に達したところで、営業担当に引き継ぐのかを計画します。カスタマージャーニーマップと攻略シナリオは定期的に見直しながら、より精度を高めることが運用上の要になります。

4)小さく生んで大きく育てるMAの運用が大事
最初からハイスペックなMAを導入しても使いこなせないケースが多いようです。自社の体制や予算措置から考えて、自社にあった最低限の機能を使いこなし、運用で成果が出てきて必要になってきた段階で、追加していく方法が賢い運用かと思います。
何より、MAは、何がうまくいって、何がうまくいかなったかという運用のノウハウを蓄積することが重要になります。導入時にはセグメント別に最低限のシンプルなシナリオでアプローチしながら、その反応を確かめ、仮説検証(PDCA)しながら運用のレベルを上げ、自社ならではの成功パターンを蓄積していくことが、最終的には、成功への近道になるかと思います。

5)継続するための予算措置を用意する
顧客情報を集め、育成し、最後のクロージングを営業に引き継いで成約する長い工程を要するMA。保険の掛け捨てと似て貯蓄できない代わりに”特効薬”としての特長を持つ広告やキャンペーンと違い、企業の資産となる貯蓄型とは言え、すぐ効果が表れるのではなく、短期的な費用対効果を出すことは難しい性格のMAの位置づけと価値を社内で真剣に共有することが重要になります。

3.自社独自のMAを完成しましょう

MA成功の特に重要な2つ、コンテンツと社内に理解、体制の充実にはほとんどの企業では、時間がかかると考えます。完全を期すことは重要ではありますが、それではかえって、いつまでも本来の目的が達成できないことになります。MAの導入当初は、メール配信の経験があれば、効率的に、それをMAでも生かせます。小さく生んで大きく育てる。まずは、できる範囲でスタートし、PDCAを運用しながら改善を繰り返し、少しずつ成果を出すことが現実的ではないでしょうか?できることから小さく始め、運用するごとに、何をすべきか、何をすべきでないか、何ができていないかがわかってくるので、進めながら少しずつ対策を打ち、充実していきます。最後に、MAシステムは顧客育成の仕組みの手段であって、その目的の達成のためには、システムに依存することなく、仮説の設定、実行、検証といったPDCの繰り返しを繰り返すごとに試行錯誤を行い、自社にとっての運用のノウハウを築くことが重要に思います。

MAベンダー(システム開発会社)のサポート体制も極めて重要です。システムの提供や研修やメールなどの導入サポートなどは、どの会社も行っていますが、他社の事例や提案してくれたりコンサルしてくれる会社は、そう多くないのではないでしょうか?実際に運用してみてうまくいかなかったら大変です。そうならないためには、しっかり社内スタッフの強い味方となる社外のサポート会社やスタッフが欠かせません。インターネット活用に強く、できれば、自社の業界や市場にも詳しく、マーケティングに精通し、さらに、コンテンツの制作や更新、メルマガの配信や履歴管理、対策などの全体的なMAの運用を任せられる「インターネットに強いマーケティング会社」も選択のひとつかもしれません。