オウンドメディアの立ち上げ時と運用時の失敗と対策例【ネクストライク197号】

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コーポレートサイトはもともと会社案内がベースにありますし、商品サイトも、商品カタログや販促ツール素材としてありますが、オウンドメディアの立ち上げ時では、すぐに使える素材はあまりありませんので、立ち上げや運営で失敗しない対策を立てることが重要になります。

また、ブログ記事で成り立つオウンドメディアは、コーポレートサイトや商品サイトと違い、顕在層でなく、潜在層を狙っているだけに、長文ブログ記事を作成できるコピーライティング力や普段のマーケットリサーチ力、潜在層を獲得するだけのSEO対策力、定期的な公開する運用体制など、かなりの専門性と運用の難しさが伴います。

オウンドメディアだけではなく、初めて取り組むデジタル施策の確実な費用対効果は、立ち上げ時には、見据えにくいのが現実ではないでしょうか?
よく、費用対効果云々で評価できないと新たな施策に踏み出さない責任者の方もいますが、それは、競合他社の後手を踏むことになり、敵失がない限り、取り返しのつかないことになるかもしれません。
オウンドメディアの成功は簡単ではないかもしれませんが、有効と考えられれば、時に、誰かが勇気を出して、チェレンジすることを考えることが事業の生き残りでは重要と考えます。

「競合が始めたから」「集客できそうだから」という理由でオウンドメディア運営を始めると失敗しやすく、期待した効果は得られず、ただコストがかかっただけになるかもしれません。

たとえば、オウンドメディア運営で失敗しているケースにはこんなことがあります。
・アクセスやPVが伸びない
・お問い合わせや成約が増えない
・オウンドメディアにかけたコストを回収できていない

しかし、本当の意味での“失敗”とは、目的を果たせないまま運営をやめてしまう、閉鎖してしまうことです。
オウンドメディアの運営が軌道に乗るまでの立ち上げ段階だけに力を入れるのではなく、その後の運営力が成功するか否かの分かれ道になります。
今回は、オウンドメディアを立ち上げ時と運営時、それぞれの失敗と対策例を考えてみます。

1.オウンドメディア立ち上げの失敗と対策例

オウンドメディアを立ち上げてから流入が一定数、増えるまでは、最低、半年〜1年かかると言われています。その間に成果が出ず、運営がうまく行かない例が目立ちます。

1)運営体制が整っていない

失敗したオウンドメディアのほとんどは、コンテンツの質が低い、公開数が少ないという特徴があります。
ではなぜ、更新が止まるのか?それはモチベーションのせいでも、他のビジネスが忙しいせいでもなく、運営体制が整っていないからです。
特に、オウンドメディアは継続が絶対条件。
当初の立ち上げ時のしっかりとした企画書を作成し、社内で共有し、マーケティングとデジタルの両方に詳しいプランナーや分析ソフトの採用、エディター、校正者、SEOコンサルタントなどのスタッフ運用体制を整えることが長期間の運用には必要になります。

2)目的・コンセプト・ゴールが曖昧

オウンドメディア運営を継続するうえで欠かせないのが、目的・コンセプトの決定です。
まず、「集客」「ブランディング」「販促」「広報・採用」など、自社のビジネスでオウンドメディアをどう活用していきたいのかの目的を考えてみます。
次にコンセプト・ゴールを明確にすることで、オウンドメディアの方向性が定まり、運営しやすくなります。

オウンドメディアを利用してビジネスの目標を達成するには、最適なKPIを設定する必要があります。
オウンドメディア運営は長期間にわたるため、日々試行錯誤しながら運営していても明確な指標がなければ、何を目指し、どこを改善して運営していけばいいのかわかりません。
KPIが明確でないまま運営されると、オウンドメディアの評価そのものができません。しっかりとKPIを設定して目標を持って運営します。
KPIが中間ごとの目標であれば、そのゴールとなるのがKGI(重要目標達成指標)。まずは最終目標となるKGIを設定し、大きなKGIから分解していく形でKPIを設定します。KGIを用意することで、ゲームのチェックポイントをクリアしていく感覚でモチベーション維持にも役立ちます。
GoogleAnalyticsなどのアクセス解析ツールを使い、PV数やアクティブユーザー数をチェックします。
※参考:ゴールの設定(KPI)

①訪問数
新規とリピーターに分け、その推移を見ることで対策を立てます。

②ページビュー数
「ユーザーがどれくらいオウンドメディアを見たか?」という指標で、

PVと同様にUU(ユニークユーザー)数もKPIにできます。これは一定期間の間にオウンドメディアを訪れたユーザーの数を表すため、純粋な訪問人数を把握したいときに役立ちます。リピーターを増やすことは顧客ごとのLTV(顧客生涯価値)を高めることでもあり、結果的に企業全体の売上を上げることにもなります。

③コンバージョン率
CV(コンバージョン)率とは、訪問したユーザーのうちどれくらいがリード(個人情報)の獲得、資料請求やお問い合わせ、購入などのコンバージョン(成果)があったかの割合です。

④採用数
採用強化を目的としたオウンドメディアなら、採用数または採用に関することをKPIに設定します。

単なる採用数をカウントするのではなく、採用時や選考時にその人はオウンドメディアの存在を知っていたか?オウンドメディアをきっかけとしてこの企業に応募したか?などをカウントします。さらに、オウンドメディアをきっかけに入社した社員の定着率・勤続年数等もKPIにできます。

3)コンテンツの数が不十分

オウンドメディアの失敗例で最も多いのが更新が止まっている状態です。その失敗を避けるためには、定期的に更新することが大切になります。ただし、コンテンツ1つひとつの質を最初から最大限まで高めようとしていると続きませんので、100%を狙うのではなく80%や70%でもいいので、とにかく更新することを心がけます。
完成度が低くても、後からいくらでもリライトができます。

まずは、コンテンツを増やして運営してみないことにはどれだけ需要があるのか検証ができないため、うまく軌道に乗れるようにコンテンツを増やしていきましょう。
成功しているオウンドメディアのコンテンツ数は500以上あり、逆に失敗しやすいオウンドメディアのコンテンツ数は100以下と言われています。コンテンツ数が足りないということは、オウンドメディアにユーザーが訪れたときに“満足できない”サイトだということです。情報量の少ないオウンドメディアには、二度と、訪問しないはずです
ひとつの目安として、オウンドメディアのコンテンツ数が100以下で更新が1週間以上止まっている場合は危機感を持ちましょう。
成果を出しているサイトは、リピーターとなっている読者に、必ず、約束と言っていいほどに定期的に公開しています。私自身も、運営をお受けしているサイトや他社サイトも見るときには、採用事例と提案コンテンツの2つのカテゴリーの定期公開有無を見ます。最低限、毎週公開したいものです。

4)コンテンツの質が低い
たとえば、避けたいサイトコンテンツのタイプ。

1.自社押し売りタイプ

多くの人の関心事は自分自身のことだけに向いています。商品の素晴さをどんなのPRしても、その人の耳には届かないか、もしくは迷惑な雑音としてしか見なされるかもしれません。ユーザーに対して不安や悩み、解決策を提示することで、初めて耳を傾けてもらえます。

Webサイトへ呼びこみ見込み客化するためには、下記の3つの条件を満たしたコンテンツが必要です。
・ユーザーが検索しそうなキーワを含んだコンテンツであること
・クリックされるコンテンツのタイトルであること
・コンテンツがユーザーの検索意図を満足させる内容であること

一般的に、自社で思うほど、自社商品やその優位性を商品のことは知られていませんので、自社の商品の素晴らしさを並べ立てたコンテンツを掲載するだけでWebサイトへ来訪することはありません。コンテンツの主人公となるべきは売り手であるあなた自身ではなく、買い手になってくれる可能性を持つターゲットユーザーです。コンテンツマーケティングを成功させるためには、売り手目線ではなく買い手目線でコンテンツを作る姿勢が大切です。

2.ブランディングこだわり重視タイプ

自社のWebサイトを構築するにあたり、それなりのこだわりを持つことは必要ですが、過度のブランディングはコンテンツマーケティングの妨げとなることがあります。
こだわりを重視するあまりにコンテンツ制作に掛かる時間やコストが増えてしまっては本末転倒です。また、デザインに凝ることも決して悪いことではありませんが、コンテンツはあまり増えていないのに、しばしばデザインをリニューアルしているケースもあります。外見のお化粧だけ良くても、中身が伴っていないという状態になります。見た目の良さにこだわっていると、ユーザーの利便性を無視した、使いにくく、ストレスを与えますので、見た目の装飾よりも「使いやすさ」を重視します。独自のデザインレイアウトやイラスト、言い回しや業界用語を使用することにこだわるあまり、検索からの流入が低くなることもあります。何より、ユーザー目線でのコンテンツ作りを心掛けます。

3.立ち上げ時だけタイプ

早く、ある程度のコンテンツを公開したいと考え、立ち上げは一定のコンテンツが公開できたが、その後、コンテンツ計画が機能しなく、ほぼ、コンテンツの更新がとぎれとぎれのケースがよくあります。また、キャンペーン期間コンテンツとして、3カ月や半年などの短期間だけ公開したものの、その後更新されていないサイトなどもよく見受けられます。何より、何度もリピートされ見込み客化、ファンするためには、継続的に更新することが重要です。

Googleの評価は日々変動します。
コンテンツの更新を止め、Webサイトの更新頻度が急激に下がれば、Googleの評価が下がる恐れがあります。Googleの評価が下がれば検索順位も下がり、あなたの会社のWebサイトはユーザーに見つかりにくい状態になってしまいます。
また、つかんだファン化したターゲットユーザーを放さないためには、継続的に更新を行うことが必要です。
逆に、コンテンツの更新を重ねることでWebページの数を増やせば、Webサイトの価値も上昇します。「質の良いコンテンツページをたくさん持っているWebサイト」としてGoogleが判断し、Webサイトの評価が上がることで検索結果上の順位が上がり、さらに多くの人の目に触れるようになります。

2.運用面での失敗例と対策

1)宣伝や広告などの「セールス色」が強い

いまや、スマホで欲しい情報はいつでもすぐに、ピンポイントで入手できます。不必要な情報も取り入れたくないからようです。なので、一方的に、しかも、企業のセールス色が強い広告や企業アカウントのSNSで溢れ、ユーザーは無意識に広告を敬遠すようになっています。
必要以上に、セールス色が強いオウンドメディアは、せっかく取り込んだ潜在ユーザーに敬遠され、逃げられてしまいます。読者に気づきと解決方法、発見を与えつつ必要により商品紹介に誘導するなど、深層心理を読み込んだ設計が必要です。

2)集客ができない

コンテンツ量などの準備が不十分な状態で集客チャネルを広げても、アクセスは増えますが、リードや成約には結びつきません。集客チャネルを広げるときは、初見のユーザーでも「また来たい」と思えるオウンドメディアになっているか、客観的にチェックしてみてください。
オウンドメディアの運営が軌道に乗り始めたら、集客チャネルを広げてみます。メインは検索エンジンから流入する自然検索チャネルですが、オウンドメディアの運営を続けていると、訪れたユーザーが記事をSNSでシェアしてくれることがあります。しかし半年以上運営してもSNSシェアがない場合は、記事がユーザーの心に響いていない、シェアするほど有益なものではないということかもしれません。
SNSでシェアされるようなコンテンツ作りを心がけます。

3)外注費用が払えず頓挫

オウンドメディア制作を外注するとそれなりのコストがかかりますが、その分、質の高いオウンドメディアやコンテンツが出来上がります。
しかし、外注を検討する段階でしっかりと予算を決められているでしょうか?
オウンドメディアにはサイト制作など立ち上がり時に支払う費用と、記事作成やSEO対策など継続的運営まわりの費用があります。サイト構築はできたけど、記事作成のノウハウがなかったり、ライターがいない、または不足、そもそも稟議が通らず予算が足りなくなり更新が止まる…という事態もよくあるようです。

4)SEOを意識していない

好きなことを自由に書くのではなく、ユーザーが求める情報を届けるのがオウンドメディアです。そのためには、SEOを意識してサイト設計やコンテンツ制作をしていく必要があります。SEOを意識しなかったら、最も柱となる集客チャネルである検索エンジンからの流入を落とすことになります。
オウンドメディアは検索エンジンからの流入で成り立っているようなものですから、SEOを意識することは必須事項です。

5)正しい運用が出来ていない

オウンドメディアを立ち上げて成功するにはどうすればいいのでしょうか?
オウンドメディアを立ち上げてから軌道に乗るまではどうしても時間がかかります。
立ち上げた後の運用の中で、ターゲットやコンテンツの柔軟な軌道修正を繰り返すことが極めて重要になります。ここには、マーケティングセンスとデジタルについての知見が必要なだけに、レベルの高いPDCAが求められます。目的・ターゲット・コンセプトを曖昧にせず、ライターやSEO分析者など運営側の熱量を下げずに、結果を出します。
オウンドメディアを立ち上げたら正しく運用しづけることがオウンドメディア立ち上げ成功の秘訣。

「正しく運営し続ける」ことで、たとえ時間はかかっても、オウンドメディアは確実に成功に向かって進んでいくはずです。

 

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